Ⅴ 指針の具体的適用

本章においては、オンライン診療を実施するに当たり、「最低限遵守する事項」及び「推奨される事項」を、その考え方とともに示すこととする。
また、本指針の理解を容易にするため、必要に応じて、オンライン診療として「望ましい例」及び「不適切な例」等を付記する。
「最低限遵守すべき事項」として掲げる事項は、オンライン診療の安全性を担保し、診療として有効な問診、診断等が行われるために必要なものである。このため、
「最低限遵守すべき事項」として掲げる事項を遵守してオンライン診療を行う場合には、医師法第 20 条に抵触するものではない。なお、患者等の医療情報を保護する観点からセキュリティに関しては、Ⅴ2(5)に遵守すべき事項として記載する。
なお、患者に重度の認知機能障害がある等により医師と十分に意思疎通を図ることができない場合は、患者本人を診察することを基本としながらも、患者の家族等が、患者の代理として、医師との情報のやりとり・診療計画の合意等を行うことができる。

1.オンライン診療の提供に関する事項
(1) 医師-患者関係/患者合意
オンライン診療においては、患者が医師に対して、心身の状態に関する情報を伝えることとなることから、医師と患者が相互に信頼関係を構築した上で行われるべきである。このため、双方の合意に基づき実施される必要がある。この合意内容には、「診療計画」として定めるオンライン診療の具体的な実施ルールが含まれる必要がある。
また、オンライン診療は、医師側の都合で行うものではなく、患者側からの求めがあってはじめて成立するものである。
さらに、医師と患者の間には医学的知識等に差があることから、オンライン診療の利点やこれにより生じるおそれのある不利益等について、医師から患者に対して十分な情報を提供した上で、患者の合意を得ることを徹底し、その上で医師が適切にオンライン診療の適用の可否を含めた医学的判断を行うべきである。

ⅰ オンライン診療を実施する際は、オンライン診療を実施する旨について、医師と患者との間で合意がある場合に行うこと。
ⅱ ⅰの合意を行うに当たっては、医師は、患者がオンライン診療を希望する旨を明示的に確認すること。なお、オンライン受診勧奨については、患者からの連絡に応じて実施する場合には、患者側の意思が明白であるため、当該確認は必要ではない。
ⅲ オンライン診療を実施する都度、医師が医学的な観点から実施の可否を判断し、オンライン診療を行うことが適切でないと判断した場合はオンライン診療を中止し、速やかに適切な対面診療につなげること。
ⅳ 医師は、患者のⅰの合意を得るに先立ち、患者に対して以下の事項について説明を行うこと。なお、緊急時にやむを得ずオンライン診療を実施する場合であって、ただちに説明等を行うことができないときは、説明可能となった時点において速やかに説明を行うこと。
触診等を行うことができない等の理由により、オンライン診療で得られる情報は限られていることから、対面診療を組み合わせる必要があること
オンライン診療を実施する都度、医師がオンライン診療の実施の可否を判断すること
(3)に示す「診療計画」に含まれる事項

(2) 適用対象
オンライン診療では、
得られる情報が視覚及び聴覚に限られる中で、可能な限り、疾病の見落としや誤診を防ぐ必要があること
医師が、患者から心身の状態に関する適切な情報を得るために、日頃より直接の対面診療を重ねるなど、医師-患者間で信頼関係を築いておく必要があること
から、初診については「かかりつけの医師」が行うことが原則である。
ただし、医学的情報が十分に把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも、オンライン診療を実施できる。
上記以外の場合であって、初診からのオンライン診療を行おうとするときは、診療前相談を行う。
また、オンライン診療の開始後であっても、オンライン診療の実施が望ましくないと判断される場合については対面による診療を行うべきである。
オンライン診療後に対面診療が必要な場合については、
「かかりつけの医師」がいる場合には、オンライン診療を行った医師が「かかりつけの医師」に紹介し、「かかりつけの医師」が実施することが望ましい。
「かかりつけの医師」がいない場合等においては、オンライン診療を行った医師が対面診療を行うことが望ましいが、患者の近隣の対面診療が可能な医療機関に紹介することも想定される(ただし、オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる。)。

ⅰ 直接の対面診察と同等でないにしても、これに代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を、オンライン診療により得ること。
ⅱ オンライン診療の実施の可否の判断については、安全にオンライン診療が行えることを確認しておくことが必要であることから、オンライン診療が困難な症状として、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて医師が判断し、オンライン診療が適さない場合には対面診療を実施する(対面診療が可能な医療機関を紹介する場合も含む。) こと。なお、緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すことに留意する。
ⅲ 初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うこと。ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等の他、症状から勘案して問診及び視診を補完するのに必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、Personal Health Record(以下「PHR」という。)等から把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できる(後者の場合、事前に得た情報を診療録に記載する必要がある。)。
ⅳ ⅲ以外の場合として「かかりつけの医師」以外の医師が診療前相談を行った上で初診からのオンライン診療を行うのは、
「かかりつけの医師」がオンライン診療を行っていない場合や、休日夜間等で、「かかりつけの医師」がオンライン診療に対応できない場合
患者に「かかりつけの医師」がいない場合
「かかりつけの医師」がオンライン診療に対応している専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合(必要な連携を行っている場合、D to P with D の場合を含む。)や、セカンドオピニオンのために受診する場合
が想定される。その際、オンライン診療の実施後、対面診療につなげられるようにしておくことが、安全性が担保されたオンライン診療が実施できる体制として求められる。
ⅴ 診療前相談により対面受診が必要と判断した場合であって、対面診療を行うのが他院である場合は、診療前相談で得た情報について必要に応じて適切に情報提供を行うこと。
ⅵ 診療前相談を行うにあたっては、結果としてオンライン診療が行えない可能性があることや、診療前相談の費用等について医療機関のホームページ等で示すほか、あらかじめ患者に十分周知することが必要である。
ⅶ 急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと。なお、急病急変患者であっても、直接の対面による診療を行った後、患者の容態が安定した段階に至った際は、オンライン診療の適用を検討してもよい。
ⅷ 在宅診療において在宅療養支援診療所が連携して地域で対応する仕組みが構築されている場合や複数の診療科の医師がチームで診療を行う場合などにおいて、特定の複数医師が関与することについて「診療計画」で明示しており、いずれかの医師が直接の対面診療を行っている場合は、全ての医師について直接の対面診療が行われていなくとも、これらの医師が交代でオンライン診療を行うこととして差し支えない。ただし、交代でオンライン診療を行う場合は、「診療計画」に医師名を記載すること。
また、オンライン診療を行う予定であった医師の病欠、勤務の変更などにより、「診療計画」において予定されていない代診医がオンライン診療を行わなければならない場合は、患者の同意を得た上で、診療録記載を含む十分な引継ぎを行っていれば、実施することとして差し支えない。
加えて、主に健康な人を対象にした診療であり、対面診療においても一般的 に同一医師が行う必要性が低いと認識されている診療を行う場合などにおいても、「診療計画」での明示など同様の要件の下、特定の複数医師が交代でオンライン診療を行うことが認められる。
ⅸ オンライン診療においては、初診は「かかりつけの医師」が行うこと、直接の対面診療を組み合わせることが原則であるが、以下の診療については、それぞれに記載する例外的な対応が許容され得る。
禁煙外来については、定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合であって、治療によるリスクが極めて低いものとして、患者側の利益と不利益を十分に勘案した上で、直接の対面診療を組み合わせないオンライン診療を行うことが許容され得る。
緊急避妊に係る診療については、緊急避妊を要するが対面診療が可能な医療機関等に係る適切な情報を有しない女性に対し、女性の健康に関する相談窓口等(女性健康支援センター、婦人相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを含む。)において、対面診療が可能な医療機関のリスト等を用いて受診可能な医療機関を紹介することとし、その上で直接の対面診療を受診することとする。例外として、地理的要因がある場合、女性の健康に関する相談窓口等に所属する又はこうした相談窓口等と連携している医師が女性の心理的な状態にかんがみて対面診療が困難であると判断した場合においては、産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師が、初診からオンライン診療を行うことは許容され得る。ただし、初診からオンライン診療を行う医師は一錠のみの院外処方を行うこととし、受診し
た女性は薬局において研修を受けた薬剤師による調剤を受け、薬剤師の面前で内服することとする。その際、医師と薬剤師はより確実な避妊法について適切に説明を行うこと。加えて、内服した女性が避妊の成否等を確認できるよう、産婦人科医による直接の対面診療を約三週間後に受診することを確実に担保することにより、初診からオンライン診療を行う医師は確実なフォローアップを行うこととする。

注 オンライン診療を行う医師は、対面診療を医療機関で行うことができないか、再度確認すること。また、オンライン診療による緊急避妊薬の処方を希望した女性が性被害を受けた可能性がある場合は、十分に女性の心理面や社会的状況にかんがみながら、警察への相談を促すこと(18 歳未満の女性が受けた可能性がある性被害が児童虐待に当たると思われる場合には児童相談所へ通告すること)、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等を紹介すること等により、適切な支援につなげること。さらに、事前に研修等を通じて、直接の対面診療による検体採取の必要性も含め、適切な対応方法について習得しておくこと。
なお、厚生労働省は、初診からのオンライン診療による緊急避妊薬の処方に係る実態調査を適宜行う。また、研修を受講した医師及び薬剤師のリストを厚生労働省のホームページに掲載する。

自身の心身の状態に関する情報の伝達に困難がある患者については、伝達できる情報が限定されるオンライン診療の適用を慎重に判断するべきである。

ⅰ 生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療の一部をオンライン診療に代替し、医師及び患者の利便性の向上を図る例
ⅱ 生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療にオンライン診療を追加し、医学管理の継続性や服薬コンプライアンス等の向上を図る例

(3) 診療計画
医師は、患者の心身の状態について十分な医学的評価を行った上で、医療の安全性の担保及び質の確保・向上や、利便性の向上を図る観点から、オンライン診療を行うに当たって必要となる医師-患者間のルールについて、②ⅰに掲げられるような事項を含め、「診療計画」として、患者の合意を得ておくべきである。

なお、診療を行う医師が代わる場合に、「診療計画」を変更することによりオンライン診療の曜日や時間帯の変更など、患者の不利益につながるときは、患者の意思を十分尊重するべきである。

ⅰ 医師は、オンライン診療を行う前に、患者の心身の状態について、直接の対面診療により十分な医学的評価(診断等)を行い、その評価に基づいて、次の事項を含む「診療計画」を定め、2年間は保存すること。
オンライン診療で行う具体的な診療内容(疾病名、治療内容等)
オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせに関する事項(頻度やタイミング等)
診療時間に関する事項(予約制等)
オンライン診療の方法(使用する情報通信機器等)
オンライン診療を行わないと判断する条件と、条件に該当した場合に直接の対面診療に切り替える旨(情報通信環境の障害等によりオンライン診療を行うことができなくなる場合を含む。)
触診等ができないこと等により得られる情報が限られることを踏まえ、患者が診察に対し積極的に協力する必要がある旨
急病急変時の対応方針(自らが対応できない疾患等の場合は、対応できる医療機関の明示)
複数の医師がオンライン診療を実施する予定がある場合は、その医師の氏名及びどのような場合にどの医師がオンライン診療を行うかの明示
情報漏洩等のリスクを踏まえて、セキュリティリスクに関する責任の範囲及びそのとぎれがないこと等の明示
ⅱ ⅰに関わらず、初診からのオンライン診療を行う場合については、診察の後にその後の方針(例えば、次回の診察の日時及び方法並びに症状の増悪があった場合の対面診療の受診先等)を患者に説明する。
ⅲ オンライン診療において、映像や音声等を、医師側又は患者側端末に保存する場合には、それらの情報が診療以外の目的に使用され、患者又は医師が不利益を被ることを防ぐ観点から、事前に医師-患者間で、映像や音声等の保存の要否や保存端末等の取り決めを明確にし、双方で合意しておくこと。なお、医療情報の保存については、Ⅴ2(5)を参照すること。
ⅳ オンライン診療を行う疾病について急変が想定され、かつ急変時には他の医療機関に入院が必要になるなど、オンライン診療を実施する医師自らが対応できないことが想定される場合、そのような急変に対応できる医療機関に対して当該患者の診療録等必要な医療情報が事前に伝達されるよう、患者の心身の状態に関する情報提供を定期的に行うなど、適切な体制を整えておかなければならない。
なお、離島など、急変時の対応を速やかに行うことが困難となると想定される場合については、急変時の対応について、事前に関係医療機関との合意を行っておくべきである。

ⅰ 「診療計画」は、文書又は電磁的記録により患者が参照できるようにすることが望ましい。
ⅱ 同一疾患について、複数の医師が同一の患者に対しオンライン診療を行う場合や、他の領域の専門医に引き継いだ場合において、既に作成されている「診療計画」を変更することにより、患者の不利益につながるときは、患者の意思を十分尊重した上で、当該「診療計画」を変更せずにオンライン診療を行うことが望ましい。

(4) 本人確認
オンライン診療において、患者が医師に対して心身の状態に関する情報を伝えるに当たっては、医師は医師であることを、患者は患者本人であることを相手側に示す必要がある。また、オンライン診療であっても、姓名を名乗ってもらうなどの患者確認を、直接の対面診察と同様に行うことが望ましい。

ⅰ 医師が医師免許を保有していることを患者が確認できる環境を整えておくこと。ただし、初診を直接の対面診療で行った際に、社会通念上、当然に医師であると認識できる状況であった場合、その後に実施するオンライン診療においては、患者からの求めがある場合を除き、医師である旨の証明をする必要はない。
ⅱ 緊急時などに医師、患者が身分確認書類を保持していない等のやむを得ない事情がある場合を除き、原則として、医師と患者双方が身分確認書類を用いてお互いに本人であることの確認を行うこと。ただし、社会通念上、当然に医師、患者本人であると認識できる状況であった場合には、診療の都度本人確認を行う必要はない。

ⅰ 医師の免許確認:HPKI カード(医師資格証)、医師免許証の提示の活用
ⅱ 患者の本人確認:健康保険証(被保険者証)、マイナンバーカード、運転免許証等の提示
(5) 薬剤処方・管理
医薬品の使用は多くの場合副作用のリスクを伴うものであり、その処方に当たっては、効能・効果と副作用のリスクとを正確に判断する必要がある。
このため、医薬品を処方する前に、患者の心身の状態を十分評価できている必要がある。特に、現在行われているオンライン診療は、診察手段が限られることから診断や治療に必要な十分な医学的情報を初診において得ることが困難な場合があり、そのため初診から安全に処方することができない医薬品がある。
また、医薬品の飲み合わせに配慮するとともに、適切な用量・日数を処方し過量処方とならないよう、医師が自らの処方内容を確認するとともに、薬剤師による処方のチェックを経ることを基本とし、薬剤管理には十分に注意が払われるべきである。

ⅰ 現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状に対応するために必要な医薬品については、医師の判断により、オンライン診療による処方を可能とする。患者の心身の状態の十分な評価を行うため、初診からのオンライン診療の場合及び新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと。
ただし、初診の場合には以下の処方は行わないこと。
麻薬及び向精神薬の処方
基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方
基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方
また、重篤な副作用が発現するおそれのある医薬品の処方は特に慎重に行うとともに、処方後の患者の服薬状況の把握に努めるなど、そのリスク管理に最大限努めなければならない。
ⅱ 医師は、患者に対し、現在服薬している医薬品を確認しなければならない。この場合、患者は医師に対し正確な申告を行うべきである。

医師は、患者に対し、かかりつけ薬剤師・薬局の下、医薬品の一元管理を行うことを求めることが望ましい。

ⅰ 患者が、向精神薬、睡眠薬、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬、美容目的に使用されうる保湿クリーム等の特定の医薬品の処方を希望するなど、医薬品の転売や不適正使用が疑われるような場合に処方することはあってはならず、このような場合に対面診療でその必要性等の確認を行わず、オンライン診療のみで患者の状態を十分に評価せず処方を行う例。
ⅱ 勃起不全治療薬等の医薬品を、禁忌の確認を行うのに十分な情報が得られていないにもかかわらず、オンライン診療のみで処方する例。

(6) 診察方法
オンライン診療では、得られる情報に限りがあるため、医師は、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を得られるよう努めなければならない。

ⅰ 医師がオンライン診療を行っている間、患者の状態について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合には、速やかにオンライン診療を中止し、直接の対面診療を行うこと。
ⅱ オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること。直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には補助的な手段として、画像や文字等による情報のやりとりを活用することは妨げない。ただし、オンライン診療は、文字、写真及び録画動画のみのやりとりで完結してはならない。
なお、オンライン診療の間などに、文字等により患者の病状の変化に直接関わらないことについてコミュニケーションを行うに当たっては、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を伴わないチャット機能(文字、写真、録画動画等による情報のやりとりを行うもの)が活用され得る。この際、オンライン診療と区別するため、あらかじめチャット機能を活用して伝達し合う事項・範囲を決めておくべきである。
ⅲ オンライン診療において、医師は、情報通信機器を介して、同時に複数の患者の診療を行ってはならない。
ⅳ 医師の他に医療従事者等が同席する場合は、その都度患者に説明を行い、患者の同意を得ること。
医師と患者が1対1で診療を行っていることを確認するために、オンライン診療の開始時間及び終了時間をアクセスログとして記録するシステムであることが望ましい。
ⅱ オンライン診療を実施する前に、直接の対面で、実際に使用する情報通信機器を用いた試験を実施し、情報通信機器を通して得られる画像の色彩や動作等について確認しておくことが望ましい。

2.オンライン診療の提供体制に関する事項
(1) 医師の所在
医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はないが、騒音のある状況等、患者の心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所でオンライン診療を行うべきではない。
また、診療の質を確保する観点から、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を確保しておくべきである。
また、オンライン診療は患者の心身の状態に関する情報の伝達を行うものであり、当該情報を保護する観点から、公衆の場でオンライン診療を行うべきではない。
なお、患者の急病急変時に適切に対応するためには、患者に対して直接の対面診療を速やかに提供できる体制を整えておく必要がある。また、責任の所在を明らかにするためにも、医師は医療機関に所属しているべきである。

ⅰ オンライン診療を行う医師は、医療機関に所属し、その所属を明らかにしていること。
ⅱ 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと。
ⅲ 医師は、騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れる等、オンライン診療を行うに当たり適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない。
ⅳ オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合には、この限りでない。
ⅴ 第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない。

オンライン診療を行う医師は、②ⅱの医療機関に容易にアクセスできるよう努めることが望ましい。

(2) 患者の所在
医療は、医療法上、病院、診療所等の医療提供施設又は患者の居宅等で提供されなければならないこととされており、この取扱いは、オンライン診療であっても同様である。医療法施行規則第1条の現行の規定では、「居宅等」とは、老人福祉法に規定する養護老人ホーム等のほか、医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所と規定されているが、療養生活を営むことができる場所については、オンライン診療であるか否かにかかわらず、既に、患者及びその家族等の状態や利便性等を勘案した判断を行っている。
他方、医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師等の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき提供されるものであることから、患者の所在が医療提供施設であるか居宅等であるかにかかわらず、第三者に患者に関する個人情報・医療情報が伝わることのないよう、患者のプライバシーに十分配慮された環境でオンライン診療が行われるべきである。
また、当然ながら、清潔が保持され、衛生上、防火上及び保安上安全と認められるような場所でオンライン診療が行われるべきである。

ⅰ 患者がオンライン診療を受ける場所は、対面診療が行われる場合と同程度に、清潔かつ安全でなければならない。
ⅱ プライバシーが保たれるよう、患者が物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療が行わなければならない。
ⅲ 医療法上、特定多数人に対して医業又は歯科医業を提供する場所は病院又は診療所であり、これはオンライン診療であっても同様であるため、特定多数人に対してオンライン診療を提供する場合には、診療所の届出を行うこと。ただし、巡回診療の実施については、昭和 37 年6月 20 日付け医発 554 厚生省医務局長通知による、巡回診療の実施に準じて新たに診療所開設の手続きを要しない場合があること、また、健康診断等の実施については、平成7年 11 月 29 日
付け健政発927 号厚生省健康政策局長通知による、巡回健診等の実施に準じて、新たに診療所開設の手続きを要しないこと。患者の日常生活等の事情によって異なるが、患者の勤務する職場等についても、療養生活を営むことのできる場所として認められる。

(3) 患者が看護師等といる場合のオンライン診療
患者が看護師等といる場合のオンライン診療(以下「D to P with N」という。)は、患者の同意の下、オンライン診療時に、患者は看護師等が側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為を看護師等に指示することで、予測された範囲内における治療行為や予測されていない新たな症状等に対する検査が看護師等を介して可能となるもの。
D to P with N においても、指針に定められた「最低限遵守するべき事項」等に則った診療を行うこと。

医師の指示による診療の補助行為の内容としては、「診療計画」及び訪問看護指示書に基づき、予測された範囲内において診療の補助行為を行うこと。
オンライン診療を行った際に、予測されていない新たな症状等が生じた場合において、医師が看護師等に対し、診断の補助となり得る追加的な検査を指示することは可能である。

D to P with N を行う医師は、原則、訪問診療等を定期的に行っている医師であり、看護師等は同一医療機関の看護師等あるいは訪問看護の指示を受けた看護師等である。

(4) 患者が医師といる場合のオンライン診療(D to P with D)
オンライン診療の形態の一つとして、患者が主治医等の医師といる場合に行うオンライン診療である D to P with D がある。D to P with D において、情報通信機器を用いて診療を行う遠隔地にいる医師は、事前に直接の対面診療を行わずにオンライン診療を行うことができ、主治医等の医師は、遠隔地にいる医師の専門的な知見・技術を活かした診療が可能となるもの。ただし、患者の側にいる医師は、既に直接の対面診療を行っている主治医等である必要があり、情報通信機器を用いて診療を行う遠隔地にいる医師は、あらかじめ、主治医等の医師より十分な情報提供を受けること。
診療の責任の主体は、原則として従来から診療している主治医等の医師にあるが、情報通信機器の特性を勘案し、問題が生じた場合の責任分担等についてあらかじめ協議しておくこと。

1)情報通信機器を用いた遠隔からの高度な技術を有する医師による手術等
高度な技術を要するなど遠隔地にいる医師でないと実施が困難な手術等を必要とし、かつ、患者の体力面などから当該医師の下への搬送・移動等が難しい患者を対象に行うこと。
※ 具体的な対象疾患や患者の状態などの詳細な適用対象は、今後は、各学会などが別途ガイドラインなどを作成して実施すること。

情報通信機器について、手術等を実施するに当たり重大な遅延等が生じない通信環境を整え、事前に通信環境の確認を行うこと。また、仮に一時的に情報通信機器等に不具合があった場合等においても、患者の側にいる主治医等の医師により手術の安全な継続が可能な体制を組むこと。
※ 具体的な提供体制等については、今後は、各学会などが別途ガイドラインなどを作成して実施すること。

2)情報通信機器を用いた遠隔からの高度な専門性を有する医師による診察・診断等

希少性の高い疾患等、専門性の観点から近隣の医療機関では診断が困難な疾患であることや遠方からでは受診するまでに長時間を要すること等により、患者の早期診断のニーズを満たすことが難しい患者を対象に行うこと。

患者は主治医等の患者の状態を十分に把握している医師とともに、遠隔地にいる医師の診療を受けること。また、患者の側にいる主治医等の医師と遠隔地にいる医師は、事前に診療情報提供書等を通じて連携をとっていること。

(5) 通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)
オンライン診療の実施に当たっては、利用する情報通信機器やクラウドサービスを含むオンライン診療システム(※1)及び汎用サービス(※2)等を適切に選択・使用するために、個人情報及びプライバシーの保護に配慮するとともに、使用するシステムに伴うリスクを踏まえた対策を講じた上で、オンライン診療を実施することが重要である。

※1 オンライン診療システムとは、オンライン診療で使用されることを念頭に作成された視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステム
※2 汎用サービスとは、オンライン診療に限らず広く用いられるサービスであって、視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステムを使用するもの

1)医師が行うべき対策
医師は、オンライン診療に用いるシステムによって講じるべき対策が異なることを理解し、オンライン診療を計画する際には、患者に対してセキュリティリスクを説明し、同意を得なければならない。医師は、システムは適宜アップデートされ、リスクも変わり得ることなど、理解を深めるべきである。

1-1)共通事項
「診療計画」を作成する際に、患者に対して使用するオンライン診療システムを示し、それに伴うセキュリティリスク等と対策および責任の所在について患者に説明し、合意を得ること。
OS やソフトウェア等を適宜アップデートするとともに、必要に応じてセキュリティソフトをインストールすること。
オンライン診療に用いるシステムを使用する際には、多要素認証を用いるのが望ましいこと。
オンライン診療システムを用いる場合は、患者がいつでも医師の本人確認ができるように必要な情報を掲載すること。
オンライン診療システムが後述の2)に記載されている要件を満たしていることを確認すること。
医師がいる空間に診療に関わっていない者がいるかを示し、また、患者がいる空間に第三者がいないか確認すること。ただし、患者がいる空間に家族等やオンライン診療支援者がいることを医師及び患者が同意している場合を除く。
プライバシーが保たれるように、患者側、医師側ともに録音、録画、撮影を同意なしに行うことがないよう確認すること。
チャット機能やファイルの送付などを患者側に利用させる場合には、医師側(所属病院等の医療従事者、スタッフ等を含む)から、セキュリティリスクを勘案したうえで、チャット機能やファイルの送付などが可能な場合とその方法についてあらかじめ患者側に指示を行うこと。
オンライン診療を実施する医師は、オンライン診療の研修等を通じて、セキュリティリスクに関する情報を適宜アップデートすること。

患者が入力した PHR をオンライン診療システム等を通じて診察に活用する際には、当該 PHR を管理する事業者との間で当該 PHR の安全管理に関する事項を確認すること。

1-2)医師が汎用サービスを用いる場合に特に留意すべき事項
医師が汎用サービスを用いる場合は、1-1)に加えて下記の事項を実施すること。

医師側から患者側につなげることを徹底すること(第三者がオンライン診療に参加することを防ぐため。)。
汎用サービスのセキュリティポリシーを適宜確認し、必要に応じて患者に説明すること。
汎用サービスを用いる場合は、医師のなりすまし防止のために、社会通念上、当然に医師本人であると認識できる場合を除き、原則として、顔写真付きの「身分証明書」(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等。ただし、マイナンバー、住所、本籍等に係る情報は含まない。以下同じ。)と「医籍登録年」を示すこと(HPKI カードを使用するのが望ましい。)。
オンライン診療システムを用いる場合と異なり、個別の汎用サービスに内在するリスクを理解し、必要な対策を行う責任が専ら医師に発生するということを理解すること。
端末立ち上げ時、パスワード認証や生体認証などを用いて操作者の認証を行うこと。
汎用サービスがアドレスリストなど端末内の他のデータと連結しない設定とすること。

1-3)医師が医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるシステムを用いる場合
医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるオンライン診療システムを用いる時は、1-1)に加えて下記の事項を実施すること。

医師は、オンライン診療システムにおいては、チャット機能やダウンロード機能を用いるリスクを踏まえて、原則使用しないこと(使用するシステム上、リスクが無害化されている場合を除く。)。
(オンライン診療システムにおいては、システム提供事業者がこれらの機能の使用に関して提供する情報を踏まえて利用を行う。)
「医療情報安全管理関連ガイドライン」に沿った対策を行うこと。特に、医師個人所有端末の業務利用(BYOD)については、原則禁止と記載されていることについて留意すること。

2)オンライン診療システム事業者が行うべき対策
※ 医療機関の医療情報管理責任者は、下記を踏まえて、所属する医師が行うべきセキュリティリスク対策を講じること。

オンライン診療システムを提供する事業者は、下記を備えたオンライン診療システムを構築し、下記の項目を満たすセキュリティ面で安全な状態を保つこと。また、オンライン診療システム事業者は、平易で理解しやすい形で、患者および医師がシステムを利用する際の権利、義務、情報漏洩・不正アクセス等のセキュリティリスク、医師・患者双方のセキュリティ対策の内容、患者への影響等について、医師に対して説明すること(分かりやすい説明資料等を作成し医師に提示することが望ましい。)。

2-1)共通事項
医師に対して、医師が負う情報漏洩・不正アクセス等のセキュリティリスクを明確に説明すること。
オンライン診療システムの中に汎用サービスを組み込んだシステムにおいても、事業者はシステム全般のセキュリティリスクに対して責任を負うこと。
オンライン診療システム等が医療情報システムに影響を及ぼし得るかを明らかにすること。(*)
医療情報システム以外のシステム(端末・サーバー等)における診療にかかる患者個人に関するデータの蓄積・残存の禁止(*)(2-2)に該当する場合を除く。)。
システムの運用保守を行う医療機関の職員や事業者、クラウドサービス事業者におけるアクセス権限の管理(ID/パスワードや生体認証、IC カード等により多要素認証を実施することが望ましい。)。(*)
不正アクセス防止措置を講じること(IDS/IPS を設置する等)。(*)
不正アクセスやなりすましを防止するとともに、患者が医師の本人確認を行えるように、顔写真付きの身分証明書と医籍登録年を常に確認できる機能を備えること(例えば、①不正アクセス等の防止のため、JPKI を活用した認証や端末へのクライアント証明書の導入、ID/パスワードの設定、②不正アクセス等の防止及び患者による医師の本人確認のため、HPKI カード等)。(*)
アクセスログの保全措置(ログ監査・監視を実施することが望ましい。)。
(*)
端末へのウィルス対策ソフトの導入、OS・ソフトウェアのアップデートの実施を定期的に促す機能。(*)
信頼性の高い機関によって発行されたサーバー証明書を用いて、通信の暗号化(TLS1.2 以上)を実施すること。(*)
オンライン診療時に、複数の患者が同一の施設からネットワークに継続的に接続する場合には、IP-VPN や IPsec+IKE による接続を行うことが望ましいこと。(*)
遠隔モニタリング等で蓄積された医療情報については、医療情報安全管理関連ガイドラインに基づいて、安全に取り扱えるシステムを確立すること。(*)
使用するドメインの不適切な移管や再利用が行われないように留意すること。

2-2)医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるシステムの場合
オンライン診療システムが、医療情報システムを扱う端末で使用され、オンライン診療を行うことで、医療情報システムに影響を及ぼす可能性がある場合、2-1)に加えて医療情報安全管理関連ガイドラインに沿った対策を行うこと。特に留意すべき点を例示として下記に示す。

法的保存義務のある医療情報を保存するサーバーを国内法の執行が及ぶ場所に設置すること。(*)
医師(医療機関の医療情報管理責任者)に対してそれぞれの追加的リスクに関して十分な説明を行うこと。
医療情報を保存するシステムへの不正侵入防止対策等を講ずること。
(*)

また、オンライン診療システムは、上記の2-1)及び2-2)の(*)を満たしているシステムであるかどうか、第三者機関に認証されるのが望ましい。第三者機関の認証としては以下のいずれかが望ましい。
一般社団法人保健医療福祉情報安全管理適合性評価協会(HISPRO)、プライバシーマーク(JIS Q15001)、ISMS(JIS Q 27001 等)、ITSMS(JIS Q 20000-1 等)の認証、情報セキュリティ監査報告書の取得、クラウドセキュリティ推進協議会の CS マークや ISMS クラウドセキュリティ認証
(ISO27017)の取得

3)患者に実施を求めるべき内容
医師はオンライン診療を活用する際は、「診療計画」の作成時に患者に対して、
オンライン診療を行う際のセキュリティおよびプライバシーのリスクを説明し、特に下記が遵守されるようにしなければならない。また、患者側が負うべき責任があることを明示しなければならない。

3-1)共通事項
使用するシステムに伴うリスクを把握すること。
オンライン診療を行う際は、使用するアプリケーション、OS が適宜アップデートされることを確認すること。
医師側の了解なくビデオ通話を録音、録画、撮影してはならないこと。
医師のアカウント等の情報を診療に関わりのない第三者に提供してはならないこと。
医師との通信中は、第三者を参加させないこと。
汎用サービスを使用する際は、患者側からは発信しないこと。

3-2)医療情報システムに影響を及ぼしうるケース(医師が判断の上、患者に通知した場合に限る)
原則、医師側が求めない限り、あるいは指示に反して、チャット機能の利用やファイルの送付などは行わないこと。特に外部 URL への誘導を含むチャットはセキュリティリスクが高いため行わないこと。

3-3)初診でオンライン診療を用いる場合
患者は、顔写真付きの身分証明書で本人証明を行うこと。顔写真付きの身分証明書を有しない場合は、2種類以上の身分証明書を用いて本人証明を行うこと。

3.その他オンライン診療に関連する事項
(1) 医師教育/患者教育
オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となる。このため、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければならない。
※ 2020 年 4 月以降、オンライン診療を実施する医師は厚生労働省が指定する研修を受講しなければならない。
医師は、オンライン診療に責任を有する者として、医療関係団体などによる研修の受講等によりこうした知識の習得に努めるとともに、1の(1)及び(3)に示す事項及び情報通信機器の使用方法、医療情報のセキュリティ上安全な取扱
い等について、患者に対しあらかじめ説明をしておくべきである。また、オンライン診療では、対面診療に比して、より患者が積極的に診療に協力する必要があることも、あらかじめ説明しておくべきである。
患者は、オンライン診療には医師に伝達できる情報等に限界があることを理解し、うまく情報が伝わらない等により医師がオンライン診療の実施の中止を決めたときは、提供される医療の安全を確保する観点から、医師の判断が尊重されるべきである。
また、医師-患者間の信頼関係を構築した上で、さらにオンライン診療の質を向上させるためには、より適切な情報の伝え方について医師-患者間で継続的に協議していくことが望ましい。
なお、患者が情報通信機器の使用に慣れていない場合については、オンライン診療支援者が機器の使用の支援を行ってもよいが、医師は、当該オンライン診療支援者に対して、適切なオンライン診療が実施されるよう、機器の使用方法や情報セキュリティ上のリスク、診療開始のタイミング等について、あらかじめ説明を行っていることが望ましい。

(2) 質評価/フィードバック
オンライン診療では、質評価やフィードバックの体制の整備が必要である。質評価においては、医学的・医学経済的・社会的観点など、多角的な観点から評価を行うことが望ましい。
対面診療と同様に診療録の記載は必要であるが、対面診療における診療録記載と遜色の無いよう注意を払うべきである。加えて、診断等の基礎となる情報
(診察時の動画や画像等)を保管する場合は、医療情報安全管理関連ガイドライン等に準じてセキュリティを講じるべきである。

(3) エビデンスの蓄積
オンライン診療の安全性や有効性等に関する情報は、個々の医療機関で保有されるだけでなく、今後のオンライン診療の進展に向け社会全体で共有・分析されていくことが望ましい。そのためにも、医師は、カルテ等における記録において、日時や診療内容などについて可能な限り具体的な記載をするよう心掛けるとともに、オンライン診療である旨が容易に判別できるよう努めることが望まれる。