Ⅲ 本指針に用いられる用語の定義と本指針の対象

(1) 用語の定義

遠隔医療
情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為。

オンライン診療
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。

オンライン受診勧奨
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムにより行う行為であり、患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨。一般用医薬品を用いた自宅療養を含む経過観察や非受診の勧奨も可能である。具体的な疾患名を挙げて、これにり患している旨や医学的判断に基づく疾患の治療方針を伝達すること、一般用医薬品の具体的な使用を指示すること、処方等を行うことなどはオンライン診療に分類されるため、これらの行為はオンライン受診勧奨により行ってはならない。なお、社会通念上明らかに医療機関を受診するほどではない症状の者に対して経過観察や非受診の指示を行うよ うな場合や、患者の個別的な状態に応じた医学的な判断を伴わない一般的な受診勧奨については遠隔健康医療相談として実施することができる。
(診療前相談)
診療前相談は、日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師(以下、本指針において「かかりつけの医師」という。)以外の医師が初診からのオンライン診療を行おうとする場合(医師が患者の医学的情報を十分に把握できる場合を除く。)に、医師-患者間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、医師が患者の症状及び医学的情報を確認する行為。適切な情報が把握でき、医師・患者双方がオンラインでの診療が可能であると判断し、相互に合意した場合にオンライン診療を実施することが可能である(オンライン診療を実施する場合においては、診療前相談で得た情報を診療録に記載する必要がある。オンライン診療に至らなかった場合にも診療前相談の記録は保存しておくことが望ましい。)。
なお、診療前相談は、診断、処方その他の診療行為は含まない行為である。

遠隔健康医療相談(医師)
遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。

遠隔健康医療相談(医師以外)
遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。

オンライン診療支援者
医師-患者間のオンライン診療において、患者が情報通信機器の使用に慣れていない場合等に、その方法の説明など円滑なコミュニケーションを支援する者。家族であるか、看護師・介護福祉士等の医療・介護従事者であるかは問わない。

診断
一般的に、「診察、検査等により得られた患者の様々な情報を、確立された医学的法則に当てはめ、患者の病状などについて判断する行為」であり、疾患の名称、原因、現在の病状、今後の病状の予測、治療方針等について、主体的に判断を行い、これを伝達する行為は診断とされ、医行為となる。

医療情報安全管理関連ガイドライン
医療情報の取扱いに関わる厚生労働省、総務省及び経済産業省の3省が策定している医療情報の安全管理に関するガイドラインの総称。「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
(厚生労働省)及び「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(総務省、経済産業省)を指す。
図:遠隔医療、オンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔健康医療相談の関連

※太枠内が本指針の対象
(2) 本指針の対象
ⅰ 本指針は、遠隔医療のうち、オンライン診療をその対象とする。
ⅱ オンライン受診勧奨については、一定の医学的判断の伝達を伴うものであり、誤った情報を患者に伝達した場合にはリスクが発生するものであるから、本指針の対象とする。本指針の適用に当たっては、「オンライン診療」を「オンライン受診勧奨」と読み替えて適用するが、直接の対面診療を前提とせず、処方も行わないので、Ⅴ1(1)「医師-患者関係/患者合意」の②ⅳ、(2)「適用対象」の②ⅰ からⅳ及びⅶからⅸ、(3)「診療計画」並びに(5)「薬剤処方・管理」については適用しない。
ⅲ 遠隔健康医療相談については、本指針の対象とはしない。ただし、遠隔健康医療相談においても、診断等の相談者の個別的な状態に応じた医学的判断を含む行為が業として行われないようマニュアルを整備し、その遵守状況について適切なモニタリングが行われることが望ましい。
ⅳ 医師が情報通信機器を通して患者を診療する際に、医師と患者の間にオンライン診療支援者が介在する場合のうち、オンライン診療支援者は単に情報通信機器の操作方法の説明等を行うに留まる場合のほか、医師が看護師又は准看護師(以下「看護師等」という。)に対して診療の補助行為を指示する場合は、医師-患者間で行われるオンライン診療の一形態として、本指針の対象とする。一方で、医師が患者に対して通信機器を通した診療をしていない状態で、医師が看護師等の医療従事者に対してオンラインで指示を行い、その指示に従い当該医療従事者が診療の補助行為等を行う場合は、本指針の対象とはしない。

本指針の適用
具体例
オンライン診療
適用
・高血圧患者の血圧コントロールの確認
・離島の患者を骨折疑いと診断し、ギプス固定などの処置
の説明等を実施
オンライン受診勧奨
Ⅴ1(1)②ⅳ,(2)②
ⅰ - ⅳ 及び ⅶ -
ⅸ,(3)並びに(5)を除き適用
・医師が患者に対し詳しく問診を行い、医師が患者個人の 心身の状態に応じた医学的な判断を行った上で、適切な 診療科への受診勧奨を実施(発疹に対し問診を行い、「あ なたはこの発疹の形状や色ですと蕁麻疹が疑われるの
で、皮膚科を受診してください」と勧奨する等)
遠隔健康医療相談
適用なし
・子ども医療電話相談事業(#8000 事業):応答マニュアルに沿って小児科医師・看護師等が電話により相談対応
・相談者個別の状態に応じた医師の判断を伴わない、医療 に関する一般的な情報提供や受診勧奨(「発疹がある場合は皮膚科を受診してください」と勧奨する等)
・労働安全衛生法に基づき産業医が行う業務(面接指導、 保健指導、健康相談等)
・教員が学校医に複数生徒が嘔吐した場合の一般的対処
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