Ⅰ オンライン診療を取り巻く環境
近年、情報通信機器は、その技術の飛躍的な進展とともに、急速な普及が進んでいる。
情報通信機器を用いた診療については、これまで、無診察治療等を禁じている医師法(昭和 23 年法律第 201 号)第 20 条との関係について、平成9年の厚生省健康政策局長通知で解釈を示し、その後、二度に渡って当該通知の改正を行っている。また、電子的に医療情報を扱う際の情報セキュリティ等の観点から、平成 17 年に
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を公表し、累次の改正を行ってきている。
また、「医師の働き方改革に関する検討会」において、医師の働き方の改善に関する検討が行われ、平成 30 年2月に公表された中間的な論点整理において、ICT を活用した勤務環境改善が必要との意見が示されている。医師の偏在についても、「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」において、平成 29 年 12 月に「第
2次中間取りまとめ」が公表されるなど、その対策について議論が進められているところであるが、情報通信機器を用いた診療は、医師の不足する地域において有用なものと考えられる。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により医療機関を受診することが困難となった患者や、宿泊療養施設の患者への医療提供手段としてオンライン診療が利用された。
このような背景もあり、今後、更なる情報通信技術の進展に伴い、情報通信機器を用いた診療の普及が一層進んでいくと考えられるが、その安全で適切な普及を推進していくためにも、情報通信機器を用いた診療に係るこれまでの考え方を整理・統合し、適切なルール整備を行うことが求められている。本指針は、こうした観点から、オンライン診療に関して、最低限遵守する事項及び推奨される事項並びにその考え方を示し、安全性・必要性・有効性の観点から、医師、患者及び関係者が安心できる適切なオンライン診療の普及を推進するために策定するものである。
また、本指針は今後のオンライン診療の普及、技術革新等の状況を踏まえ、定期的に内容を見直すことを予定している。